2025年1月31日(金)に行われたミュージカル『昭和元禄落語心中』制作発表に山崎育三郎・古川雄大・明日海りおが出席した。
原作は、雲田はるこ氏による戦前から平成に至る落語界を舞台に、人々の多彩な生き様を描いた大ヒット漫画。2016・17年にアニメ化、2018年にドラマ化され、いずれも大きな話題となった。山崎育三郎・古川雄大・明日海りおが初共演を果たし、小池修一郎氏が手がける、日本発の和物オリジナルミュージカル『昭和元禄落語心中』が2月28日(金)より東急シアターオーブ (東京)、3月29日(土)よりフェスティバルホール (大阪)、4月14日(月)より福岡市民ホールにて上演する。
助六役の山崎は落語の演目『野ざらし』を披露し「台本にないことをやらせていただきました。今日は皆様に楽しんでいただきたいなと思っておりまして、ミュージカル『昭和元禄落語心中』の魅力をお伝えできればなと思っています。この後(挨拶する)古川くんに大きなプレッシャーをかけましたので何かあればいいなと思っております」とコメント。みよ吉役の明日海は「みよ吉役を演じます明日海りおです。お忙しい中お集まりくださりまして本当にありがとうございます。私も“一席”と思っているのですが、落語家の役ではないので今日は失礼させていただきます」という挨拶に、山崎から「日本舞踊でもいいですよ」と突っ込まれ、即座に日本舞踊を披露。古川も演目『死神』を実演し、会場からは拍手が起こった。
山崎は「今から7年前にNHKのドラマ『昭和元禄落語心中』に出させていただきまして、その撮影というのは、色々なドラマの作品に携わらせていただいた中で、最も苦しい、辛い思い出が多い作品でありまして。なぜかというと当時、助六役を演じる以外に古典落語を9演目覚えなければならず、クランクインする直前までミュージカル『モーツァルト!』という作品をやっていましたので、ずっと舞台袖でモーツァルトの格好で古典落語を練習し、本当にギリギリの状態でミュージカルが終わってすぐに落語家として撮影が始まりました。作品自体が役者をその世界に誘ってくれる、引き上げてくれるエネルギーを持っている作品との出会いっていうのは何作かあり、この『昭和元禄落語心中』という作品に携わらせていただいた時に、自分がどうこうしなくても、助六にしてくれる感覚があって、それが僕の中ですごく大きなことでした。現場でもエキストラの方々が300名いらっしゃる前で落語を披露する中で、これを舞台にしたいっていう思いをずっと持っていて。ちょうどお2人(古川と明日海)と作品を作るという話になった時に、僕はずっと自分の中で温めていた『昭和元禄落語心中』の菊比古(八雲)は雄大しかいないと思っていて、明日海さんのみよ吉もすぐに自分の中でイメージが湧いて、絶対素敵になるだろうと思って提案させていただいて。僕が『昭和元禄落語心中』をやりたいという気持ちに賛同してくださって、この話がスタートしました」と熱い思いを語り、古川は「僕は(山崎から)新しいものを作っていきたいというお話を元々聞いていたので、やっと実現するんだなという思いですね。事務所の3人でできるっていうのは僕にとっても大きいことですし、期待しています。日本オリジナルミュージカルということで、日本の要素がふんだんに詰め込まれているので、ここから世界に発信していける第一歩に携われるのはすごく嬉しいですし、育三郎さんの思いもちゃんと聞いていたので力になれたらなという思いです」とコメント。明日海は「初めて育様と一緒に取材を受けた時に『事務所には雄大もいるから一緒にミュージカルをやりましょうよ』とおっしゃっていただいて。そういうのって社交辞令でもあったりするじゃないですか。夢のようだけれど、まさかないだろうなと思っていたら、数年経って話が動き出して、ご一緒させていただけるということだったので、本当に夢のような稽古期間を過ごしております。『昭和元禄落語心中』という作品を上演が決まってから、漫画原作やドラマ、アニメを観させていただいたんですけれど、助六さん、菊比古(八雲)さんが全く違う魅力を持っていて、人の惹きつけ方、落語をされるお2人が本当に育様と古川さんにぴったりで。稽古場にいても2人がそれぞれ挑まれていく姿が素敵で、本当にピタッとはまった作品だなといつも感じています」と笑顔を見せた。
山崎が古川との年齢を「1個差です。すごく上のようにずっと接してくるのですが同年代です」と話すと、すかさず古川は「いつも1個下と言われるんですけれど、学年でいうと2個違います。高1と高3は全然違いますよ」と突っ込み、仲の良さをうかがわせる中、助六と菊比古(八雲)の関係性を山崎は「雄大とは昔からミュージカルで一緒に戦ってきた仲で、2人の積み重ねた関係性から、この役に入れているので(役柄の)2人の間に流れているもの、親友でも家族でも恋人でもないようなもっと何か深い魂の繋がりを感じながら演じたいと思います」とコメント。
落語を題材にミュージカルを作ることについて山崎は「ミュージカルをやらせていただいている中で、ブロードウェイチームとご一緒させていただいた時に『僕達の作品をやってくれるのは嬉しいけれど、日本オリジナルのミュージカルを作らないのか』とよく言っていただいていたんです。僕もそう思いますし、日本人だからこそできる作品っていうのを作りたかった。落語と歌を歌うことが似ているというか、共通するものがあって。音楽が流れると細い糸がずっと繋がっていくように、気持ちが途切れないように歌っていくのですが、落語も喋り始めたら、緊張感の中、早く喋ってみたり大きい声や小さい声を出したりするので、落語と音楽がマッチすると稽古をしていて実感しています。この3人がメインで話が進んでいくので、割と繊細な、日本人ならではの、『こう思っているけれど言えない歯がゆさ』みたいなものが表れている哀愁のある楽曲もできていますし、アンサンブルのみんなもすごいパワフルで、この大舞台で華やかに『昭和元禄落語心中』が伝わるようなシーンも小池修一郎先生が作ってくださっているので、振り幅がすごくあると思います」と語り、明日海は楽曲について「沢山ナンバーがあるのですが、ノリノリの曲やタンゴっぽいアレンジのものがあったりと本当にバラエティに富んでいるなと思っています。私は小唄や、ちょっと演歌っぽく聞こえる曲を歌わせていただいているので、研究しているところです」と明かした。
先日落語を初めて鑑賞したという古川は「志の輔師匠の落語を観させていただきました。3時間、話を聞くことが初めてだったのですが1幕が終わって1時間50分ぐらい経っていたんですけれど、一瞬で終わりまして。真っ暗な空間の中で最高のパフォーマンスを観ながら、頭の中で、そのドラマを展開していくことができるのが落語の良さなんだなと感じました。すごくいい経験をさせていただいて、その後なんと対談もして色々貴重なお話をさせていただいて、それがパンフレットに載るので、ぜひ買っていただきたいなと思います」と話し、明日海は落語のイメージを「私は子供の頃に修学旅行で初めて落語を聞いて楽しんだというのと、宝塚歌劇団に入りまして『なみだ橋えがお橋』という色々落語を組み合わせた人情話で、コメディーのとても面白い作品に出させていただいた時に文七をやらせていただいて、落語は身近なものに感じました。でも落語家さんがどんな思いでやっているかということに触れる機会は今までなかったので、古川さんの対談を私も読ませていただきたいなと思いましたし、何よりこうやって近くで菊比古(八雲)さん、助六さんの落語への思いを感じながら生きる役を演じることができて本当に幸せだなと思っております」と述べた。
個性豊かなキャスト陣について聞かれると山崎は「(七代目八雲を演じる)中村梅雀さんからは色々なことを教えていただきますね。江戸弁や所作など、まさに師匠といったような関係性を築いております。金井さんはミュージカル『トッツィー』という作品で親友役でご一緒したのですが、この松田役を本当に魅力的に演じてくださっていて。松田さんと与太郎でストーリーテラーのようにお客様に物語を伝えていくという役割なのですが、原作にもドラマにもない新しい、とてもチャーミングな松田さんになっています」と話し、与太郎役の黒羽麻璃央さんについて古川は「何度もご一緒させていただいていますが、彼らしい与太郎をしっかり作ってくれているので、周りに素晴らしい方が揃っていると、とても安心できるので自由にやれたらなと思っています」とコメント。小夏を演じる水谷について明日海は「助六さんとみよ吉の間に生まれる小夏役を水谷果穂ちゃんが演じてくれているんですけれど、本当に純粋な感性で。ミュージカル初挑戦なのですが無駄なものが何にもない、ピュアな状態で一生懸命お芝居に向かう姿が、熱さと冷静さを両方持っている小夏とリンクして、いい刺激をいただいているなと思います」と語った。
最後に山崎は「98年が自分のミュージカルデビューの年で、12歳の頃、小椋佳さんにオーディションで選んでいただきまして。小椋佳さんが日本のオリジナルミュージカルを作りたいという思いでスタートしたチームで、0からミュージカルを作るというものを見て僕は育って、それが自分の原点になっていまして。20代、色々な作品に出させていただいてブロードウェイやロンドン、ウィーンミュージカルに立たせていただいておりましたけれど、自分の中ではいつかオリジナルミュージカルを日本でやりたい、そして日本人の自分たちが演じる作品を海外に持っていきたい。その夢をずっと持って2025年、この夢が叶い、第一歩となりました。本当にミュージカル界に新しい風が吹くような、そんな作品になっております。ぜひ皆さん、この日本初のミュージカル、楽しみにしていてください。劇場でお待ちしております。ありがとうございました」と呼びかけ、明日海は「このオリジナルミュージカル『昭和元禄落語心中』ですが、原作ファンの方にも、落語ファンの方にも、ミュージカルを観ることが初めてだよという方にも、必ず楽しんでいただける作品になること間違いなしだと思っております。素晴らしい先輩方と演出の小池先生にも本当にお世話になっておりますので、ご一緒させていただける機会を本当に感謝しながら、繊細な役どころを丁寧に描き出していって、素敵なみよ吉になれるように頑張ります」とコメント。古川は「昨日一幕を通しまして、あまりこんなことを言うタイプじゃないんですけれど面白いんですよね。見せかけの面白いではなく、にじみ出る面白さなのですが、それは原作のパワーが強いというのはもちろんあるんですけれど、天才小池修一郎先生、そして天才(作曲・音楽監督)小澤さん、そしてそれを歌うのが日本を代表するスターお2人ということで魅力が詰まっている作品だと思いますし、日本ならではのものに仕上がると思いますので、ここから世界に向けての第一歩、初演をぜひ皆様に観劇していただきたいなと思います。パワーのある作品だと思いますので、この機会を逃さないでください。よろしくお願い致します」とメッセージを送った。