2024年5月18日(土)に行われた、映画『湖の女たち』公開記念舞台挨拶に福士蒼汰と松本まりかが出席した。
吉田修一氏による“現代の黙示録”とも言うべき傑作同名小説を『日日是好日』、『星の子』、『MOTHER マザー』の大森立嗣氏が監督・脚本にて映画化した『湖の女たち』が
5 月17 日(金)より公開した。
主演・濱中圭介役を演じた福士は「濱中圭介を演じました福士蒼汰です。圭介という役は、すごく複雑な心境を持ちながら生きている青年なのですが、普段は僕、すごく笑顔なので(笑)今日の舞台挨拶は安心してお話を聞いてくれたらと思っています。短い時間ですが、よろしくお願いします」と話し、同じく主演・豊田佳代役の松本は「本日はお越しいただき本当にありがとうございます。私はこの映画を撮ってから、公開されるのがすごく怖くもありました。個人的なことですけれど、一度もSNSに書けていない作品で、それほどこの映画を自分の中でどう表現したらいいのか難しいというか。でも、本当にこの作品は私にとって、人生の中でとても大きな大切な作品です。どうぞよろしくお願い致します」と挨拶。
公開を迎えて福士は「濱中圭介という役をどう捉えてくださったのかなと思います。圭介と佳代の2人はインモラルな関係性があったり、ストーリーの軸が沢山ある中で皆さんがどこに関連性を見つけるのか、意味が分からないと素直に思うのではと感じ、1人1人にお話を聞きたい気持ちです」と語り、松本は撮影について「出口が見えないし、答えが分からない中、監督はただ、そんな答えの分かっていない私をひたすら信頼し続けてくれました。その信頼が非常にきつかったのですが、同時に、ここまで覚悟を持って役者を信頼する、人を信頼するというのはどういうことなのかということを私は体感しました。撮影が終わって1年半が経って、監督があの時、自分に覚悟を持って信じてくださったことを私は今、やろうとしています。ようやくこの作品に関われた意味を実感していて、本当に美しいものを美しいと思えるようになって、生きる上でとても大事なものをこの映画から教えてもらいました。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』という映画を観た時と、この映画で演技をした時と同じような感覚を得て、暗くて、混沌としている世界の中で見えてくるものが本当の意味で美しいものということを、この作品から見えてくるような気がしていて。この映画を通して私はすごく生きることが楽しくなりましたし、生きているという実感が持てるようになりました」と振り返った。
舞台挨拶の終盤には原作者の吉田修一さんからの手紙が読み上げられ、福士は「すごくありがたいお言葉を沢山いただいたなと思うのですが、ありがたいお言葉をいただけばいただくほど、もっとやれるな、やりたいな、やりたかったなみたいな思いがすごく溢れてきて、自分の未熟さをより実感しちゃうんです。役者としては大きく変わりましたし、人としても物事の捉え方、言葉の扱い方が少しずつ変わってきたなという感覚があって。浅野(忠信)さんや三田(佳子)さんのように役者を続けていくと、こんなに綺麗な景色を見ることができるんだと感じ、続けていきたいなと思いますし、自分の未熟さを感じて複雑な心境が入り混じったりもして、そんな感覚の30代なんだなと今思いました。吉田さんありがとうございます」と話し、松本は「正直な話をすると、私はこの作品を受けたということ自体、非常に罪深いことをしたなと思っていました。この役を体現するにはあまりに自分は未熟すぎましたが、私は大森監督が撮る吉田さんの作品をどうしてもやりたかった。自分の欲求だけでやりたいと思ってやってしまいました。撮り終わってからも、すごく罪深いことをしたなと思っていたのですが、吉田さんのお言葉は救いになりましたし、自分が何かを表現する立場にいる、自分が影響力を持つ仕事をしていることの自覚、安易に言葉にしないっていうことを、本当に大事に生きていかないといけないなと思いました。安易な言葉を使っているつもりはありませんが、自分から出てくるもの、表現というものが嘘なく本当に美しいと思えるものであり続けたいなと、お手紙を聞いて改めて思いました」と涙を浮かべながら正直な思いを語った。
最後に松本は「私はこの映画に出演して人間がそもそも持っている美しさみたいなものを教えてもらいました。そして今、39年の人生で初めて一瞬一瞬が充実して、楽しくいきいきと生きることができています。この映画に出会わなかったら、おそらくたどり着けていないときっぱりと言えます。皆さんにとって、この映画がそういった作品になることを信じて、皆さんの心に届いたらいいなと思います。今日は本当にありがとうございました」と感謝を述べ、福士は「この作品を通して、大森監督に演出してもらって本当に自分の中の脳みそがガラッと変わり、考え方、役者としての心の使い方を教わりました。浅野さんが目の前で体現されていて、この人に近づいていければいいんだなという思いをすごく感じました。松本さんとは撮影中、(役作りとして)一切話さない、笑顔を見せないということをやり通したのですが、キャンペーンや舞台挨拶を通して、松本さんの持っているエネルギーが佳代という存在とリンクして、人間的で美しいなと側にいても感じましたし、佳代という役柄にもそれが表れていたんじゃないかなと思います。『湖の女たち』という作品は、日本で最近は撮られないような作品性だと僕も思っています。すごくチャレンジングでもありますので、皆さんどうかこの作品を応援してくれたら嬉しいなと思います。本日はありがとうございました」とメッセージを送った。