2024年4月16日(火)に行われた、映画『湖の女たち』完成披露上映会に福士蒼汰と松本まりか、財前直見が出席した。
吉田修一氏による“現代の黙示録”とも言うべき傑作同名小説を『日日是好日』、『星の子』、『MOTHER マザー』の大森立嗣氏が監督・脚本にて映画化した『湖の女たち』が5月17日(金)より公開する。
主演・濱中圭介役を演じた福士は「濱中圭介を演じました福士蒼汰です。本日が完成披露上映会ということで、ちょっとドキドキ、不安な面もありながら、すごく楽しみな面もありまして、圭介という僕がいまだかつて演じたことがないキャラクターなので、どう受け取ってもらえるかがすごく楽しみです。本日は短い時間ですが、よろしくお願いします」と話し、同じく主演・豊田佳代役を演じた松本は「本日はお集まりいただき、本当にありがとうございます。佳代を演じました松本まりかです。お話をいただいてから2年半ぐらいたって、いよいよこの日が来たのかという気持ちでいます。どう表現していいかが自分にもまだ言葉が見つかっていなくて、この映画を観たときに、皆さんがどういう感覚を得て、どういった言葉で表現されるのかがすごく楽しみです。皆さん、どうぞ楽しんでいってください。今日はよろしくお願い致します」とコメント。財前は「皆さんこんにちは、財前直見です。介護士の松本という役で、作品を最初に観た時に良かった、普通のおばちゃんに映っていたと思ったのですが、そのぐらい追い詰められて。福士くん(演じる圭介)がまた嫌なヤツなんですよ。浅野忠信さん演じる伊佐美も嫌なヤツで。私と(池田由季役の)福地桃子ちゃんが唯一普通の人間です。後で観たら分かると思いますけれど、皆さん、それをちゃんと頭の中に入れて、この後の上映を観ていただきたいと思います。楽しみにしていてください。よろしくお願い致します」と挨拶した。
役作りについて福士は「ちょっと語弊があるかもしれないのですが、あまり役作りをしていなくて。監督の『よーい、スタート』がかかった時に、今その場で感じ取ったこと、思ったことを、思ったタイミングで言う、行動するっていうことだけを、今生きるってことだけに集中して演じたんです。役作りをちょっと横に置いて、今自分がそこに立っているんだっていうことに集中して演じたので、すごく主観を強めた作品だったなと思っています。完成した作品を観たら、こんな表情しているんだと自分で驚いたので、観た時にはすごく客観性があって、自分の中でも新鮮なキャラクターでしたし、発見が沢山あった役どころでした」と振り返り、キャラクターの見どころについて「目ですね。尋問の取り調べのシーンで監督からの演出もあり、その時の目のお芝居は無意識でしたが、こんなひどい目をしていたんだと感じました」と語った。
佳代という役柄について松本は「正直、頭で考えても私には持ち得ない感覚だったんです。脚本を読んでも、なかなか今までの経験値の中から到底理解できるというものでもなかったので頭で考えることを放棄しました。極限状態にいるんだろうなっていうことは分かって、圭介に支配されて自分の欲望が目覚めようとしていて、苦しい、もがいているという感覚は自分でも作れるなと思い、そういう痛みや苦しみ、もどかしさみたいなことは感じていました」と話し、共感できる部分を「真面目ですよね。佳代の良さというのはよく分からないのですが、良かったなって思うのは、彼女が生きているみたいな実感を、圭介に出会って得られたところがすごく良かったなって。希望を見出せました」とコメント。
続いてこの作品を一言で表すならばという質問にフリップで答える場面で福士は“堆積”と書かれたフリップを掲げ「この作品は歴史が出てきて、その歴史によって人が形成されていくことや、圧がかかっていることに対して仕方がなく過ごしているみたいなものも同時に描かれているのですが、それが湖だなと思って。川や海のように流れるものではなく、湖はどんどん堆積していく。湖と歴史というものをかけて、僕は一言で表すと堆積かなと思いました」と答え、松本は「造語なのですが、“至美”です。人間のドロドロした部分や醜い部分、もどかしい部分、あとは湖の美しさ、自然の美しさが全て美に至る映画なんじゃないかなと思います。美と呼んでいいのかと思わせてくれるのはすごく希望だなと私は思ったんです。だからこの言葉に尽きるのかなと思いました」と回答。財前は「“人間だもの”と書きました。人間の悪いところや欲など、普段人にはあまり見せない、いい人がいいよみたいなところが、ちょっと今の世の中にあるような気がして。それよりも悪い自分も認めてあげるというのが人間として生きることなんじゃないかっていうのが、私の中のこの作品のテーマになっていて、悪い自分を愛してあげようと観終わった後に感じてもらったらいいと思います」と説明した。
最後に松本は「私がこの撮影を体験して思ったことは監督が私、俳優を全肯定してくださる演出をしてくださったんですね。その時に人を信頼するっていうことは、いかなるものなのかっていうこと、その大きさと深さと美しさにすごく感動してしまって。この撮影が終わってから人を信頼するっていうことを指針として生きてきた1年半で、信頼しきるっていう覚悟が出ている映画だと思います。それはとても美しいことなんだっていうのを、私は試写で観て感じました。だから本当に私にとってこの映画は、人を信頼する、そしてそういう世の中ってとても美しいんだっていうことを体感した作品です。皆さんはどういった感想を持たれるか分かりませんし、理解できないかもしれません。この映画は理解できないかもしれないけれど、その先に何か感じるものがあって、希望みたいな、美しさみたいなものを感じてもらえたら幸いだなと思っております。本当に素晴らしい映画と出会えて、私は幸せだなと思っています。本日はどうもありがとうございました」と呼びかけ、福士は「原作や脚本を読んだ時に最初に思ったことが、美術館に入ったような感覚だったんです。いくつか絵があるんだけど、 2つの絵が象徴的に目の前にあるような感覚があって、1枚は抽象画で1枚は具象画の絵で。2つの絵に共通点があるよと言われているような感覚に陥って、結局答え合わせをしてみようと試みたこともあるんですけれど、作品が完成した今もまだ、その答えは見つかっていないのですが、皆さんも観た後にどう思ったと話し合ってくれると嬉しいなと思います。そしてこの場を借りて、本当に役者として自分を変えてくれた監督にもう1度ありがとうという感謝を言いたいと思います。ありがとうございました。大森さんには沢山お世話になって、これからもずっと大森さんがここ(頭の上に)に常にいるんです。大森さんだったらなんて言うかなとか、大森さんは俺の心を見透かすから、今のだったらNGをくらうなと思いながら、映画の撮影以来、お芝居をしていて。これからもこの作品を通して得たことや、感覚、心の動かし方みたいなものを忘れないようにして、俳優を頑張っていきたいと思います。本日は短い時間でしたがありがとうございました」と感謝を述べた。