2023年12月17日(日)に行われた、映画『市子』大ヒット御礼舞台挨拶に杉咲花が出席した。
本作は、監督の戸田彬弘氏が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品でもあり、サンモールスタジオ選定賞2015では最優秀脚本賞を受賞した舞台「川辺市⼦のために」が原作。観客から熱い支持を受け2度再演された⼈気の舞台が映画化となり、2023年12月8日(金)より全国公開した。
主演・川辺市子役を演じる杉咲は「川辺市子を演じました杉咲花です。再びこのような形で、ここに立つことができてすごく嬉しいです。短い時間ですが時間が許す限り、お話しできたらなと思います。よろしくお願いします」と話し、本作のヒットを受けて「感無量ですね。今日もこの光景に胸がいっぱいですし、自分にとって市子という映画に出会えたことが財産だと思っているんですけれど、こんなにも多くの方々に映画が届いていて嬉しいの一言に尽きるなと思います」と喜びを語った。
この日、観客からのQ&Aが実施され“高校生から20代という幅広い年を演じる上で工夫した点”について「何歳の設定だからと意識したことはあまりなくて。監督が年表を作ってくださって、市子が生まれてからどんな時間を過ごしてきたのかっていうことを、本編に描かれていない部分もかなり細かく作って渡してくださったので、その時市子がどういう状態であるのかということを把握することができて、目の前にいる相手が変わっていくにつれて、自分の態度も自然と変化していくような感覚でした」と答え、“真夏の撮影で市子を演じる上で、心のしんどさをどのように切り替えていたか”という質問に「暑さとかだるさみたいなものが、市子を演じる上ですごく必要な感覚というか、とてもお芝居に作用していた気がしていて。あの時期に撮影できて本当に良かったなと思っています。やっぱりこれだけ引力のある作品なので、心を侵食されるような瞬間も確かにあったんですけれど、そのようになりかける時ほど市子と距離を置くようにはしていました。撮影していない間も自分は市子なんだって思って過ごしていると、市子のことを分かった気になってしまう気がして、それを避けたかったので撮影が終わって衣装を脱いで、ホテルに帰ってきた時に『なんかお腹すいたな』とか『あの夕日が綺麗だな』とか、そういう自分の感覚に素直でいることを心がけていました」と明かした。
舞台挨拶の最後に戸田監督より花束が贈られ、「先ほど勇気を出して手を挙げてくださった皆様、本当にありがとうございました。嬉しかったですし、もっと答えられたら良かったなと思います。今、お花をいただきましたが、これは原作者である戸田さんが本当に0から生み出したお話で、この出会いを私は本当に幸せに感じているので、そのまま戸田さんにお渡ししたいような気持ちなんですけれど、素晴らしい作品に関わることができて幸せだったなっていう、その気持ちがすごく大きいです。2時間の(劇場の)暗闇の中で、人の人生を見つめ続けるってすごいことだよなって私は思っていて。日々色々なことがあるじゃないですか。私も含めて多くの方々が、身も心も忙しない日々をきっと過ごしていて、疲れたり、それでも幸せになりたくて一生懸命生きている方たちがいて。そんな中で安らぎとか共感とか感動を求めて、映画を観に行く方々が多いのではないかなと自分は感じているんですけれど、市子っていうこの映画は、そこに当てはまるような映画ではないかもしれなくて。それでも、これだけの多くの方々が来てくださっていることにものすごく感動しています。市子を観ようと思ってくださった方々は人間っていう生き物の真影を覗きに来ようとしてくれているのかなと感じて、こんなふうにこの映画が広がりを見せてくれていることに希望を感じています。市子という人を構築するのに色々な要素があると思うんですけど、その1つ1つが不幸なのか幸福なのかっていうことは自分達には決められなくて、市子がどんなことを考えているのかをぜひ想像していただけたら嬉しいです。共感とか感動とかと隣に並ぶような、何か豊かなものが、そこには凛と存在しているのではないかなと自分は信じています。そんなまなざしを、この劇場を出た後に、自分達のすぐ近くの人々や世の中に向けてもらえたら嬉しいなと思います。数ある映画の中からこの映画を選んでくださって本当にありがとうございました。嬉しかったです」と感謝を述べた。